金木犀
窓を開けると、辺り一面に立ち込めている金木犀の香りで秋の訪れを感じます。どこからともなく漂ってくる、まとわりつかず控えめだけれども、その存在はまず見過ごされることはなく、心を和ませてくれる金木犀の香りが大好きです。快晴の秋空と金木犀の香り、この組み合わせを全身で感じるとき、私は、言葉にできないほど嬉しくなります。
思い出すことがあります。
以前、大切な人と金木犀の香りを分かち合いたくて、庭の枝木を数本切って、包装紙に包んで、その人の元へ届けたことがありました。
包装紙を開封すると、残念なことに、黄色い小粒の花たちはすべて零れ落ちて、枝木と葉っぱだけになっていました。金木犀は、小分けにしてお届けものにするには不向きな花のようです。
このことがあって以降、私は、花を咲かせている金木犀の樹木の近くにたたずんで胸いっぱいにその香りを吸い込んで、心身から沸き起こるポジティブな感覚を堪能することにしています。