ラボラトリー方式(メソッド)による体験学習について②

【ラボラトリー・メソッドの誕生】

ベネ(1964)は、ラボラトリー・トレーニングのはじまりについて概説しています。1946年の夏、米国コネティカット州でのワークショップでの出来事からである。教育局とマサチューセッツ工科大学集団力学研究所の協力と援助のもとに実験的な試みとしてワークショップは実施されました。目的は、当時、人種問題委員会が作成した公正雇用実施法の正しい理解と、その遵守を促進する地域社会のリーダーを養成することでした。参加者は、ソーシャルワーカー、教育関係者、企業人、一般市民であった。集団力学研究所は、ワークショップにおける体験の効果と参加者の行動変容が復帰後の現場に及ぼす適用効果が何によって規定されるかについての仮説を検証することでした。トレーニングのリーダーには、ベネ(Bene,K.D.)、ブラッドフォード(Bradford,L.P.)、リピット(Lippitt,R.)らがあたり、調査研究には、レヴィン(Lewin,k.)とリピット、観察者として、ドイッチ(Deutsch,M.)、ホーフィッツ(Horwitz,M.)、シーマン(Seemam,M.)があたりました。

レヴィンの発案により、トレーナーと研究観察者の会合を夕方開き、各グループの発達過程についての検討を行い、テープに録音することになりました。また、リーダーやメンバー、集団行動についての分析や解釈を行い、記録することになりました。

講義やロールプレイングやグループ討議を行いながら研修を進めていた時のことです。もともとスタッフだけで行っていた夕方の会合に、参加者から出席したいとの申し出があり、参加が了解され、参加者自身をも交えて、研修のときに起こったことについて、討議さましれた。

ある参加者からすると、観察者とリーダーが捉えていることは正しいが、他の参加者からすると正しくないといって受け付けませんでした。それで、参加者は観察者やトレーナーと一緒になって、行動の分析や解釈を始めました。やがて、全ての参加者、スタッフがこの夕食会に出るようになり、3時間に及ぶ討論会がなされました。これによって、自らの行動や集団行動について、より深い理解をもつようになりました。

レヴィンらは、この出来事を通して、グループワークの学習にとって、まさに“いまここ”の場で起こっている生のグループ体験を学習素材に用いる学習の方が、グループダイナミックスや人間関係について一般化された概念的な講義よりも、学習者にとっては、はるかに意味のある学習となることを発見しました。

しかし、残念なことに、レヴィンはこの新しい教育方法を試すことなく亡くなってしまいました。この教育方法は、全米教育協会に属するNTL(National Training Laboratories)によって1947年にメイン州べセルでTグループとして実現されました。

その後この教育方法は、ラボラトリー・メソッドとしてとして、社会的感受性、コミュニケーション能力の育成やリーダーシップトレーニング、組織開発などさまざまな領域で応用されています(津村,1992)。

 ※ラボラトリー方式=ラボラトリー・メソッドです。

☆参考文献

・J.R.ベネ 1964 T-GROUP THEORY AND LABORATORY METHOD  ラボラトリにおけるTグループの歴史 感受性訓練 Tグループの理論と方法 L.p.ブラッドフォード,J.R.ギップ,K.D.ベネ編 1971三隅二不二 監訳 日本生産性本部 

・津村 俊充 1992 「ラボラトリーメソッドの誕生と構成要素」人間関係トレーニング~私を育てる教育への人間学的アプローチ